

申告不要を選んだだけで、国民健康保険料が年間60万円以上増えることがあります。

確定申告不要制度とは、一定の配当所得について納税者の判断で確定申告をしなくてもよいとする制度です 。上場株式の配当金は支払い時に所得税・復興特別所得税(15.315%)と住民税(5%)が源泉徴収されており、合計20.315%の税負担で課税が完結する仕組みになっています 。つまり申告しなくても法的に問題はなく、これが「原則不要」とされる根拠です。
関連)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1330.htm
対象となる配当の主な条件は以下のとおりです。
関連)https://www.attax.co.jp/zei/haito0112/
関連)https://www.attax.co.jp/zei/haito0112/
関連)https://www.keisan.nta.go.jp/r5yokuaru/cat2/cat21/cat215/haitoshotoku.html
制度の選択は「1回の支払いを受けるごと」または「口座ごと」に行えます。これが原則です。
なお、外国株式の配当は申告不要制度の対象外となります。外国税額控除を使って二重課税分を取り戻すには確定申告が必要になるため、注意が必要です 。
申告不要制度を使えばラクですが、申告することで税金が戻るケースも確実に存在します。これは使えそうです。
ケース①:配当控除で税負担が下がる場合
配当控除とは、国内上場株式の配当を総合課税で申告すると、所得税から一定割合(基本10%)を差し引ける制度です 。課税所得が695万円以下の場合、申告後の実効税率が源泉徴収の20.315%を下回るため、差額が還付されます 。
関連)https://taxt.jp/2020/12/09/haitoukin_kakuteishinkoku/
課税所得ごとの税率と配当控除後の実質負担率(所得税分のみ)を整理すると。
| 課税所得 | 所得税率 | 配当控除率 | 実質負担率 |
|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 10% | 0%(マイナスは不可) |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% | 10% | 0% |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 10% | 10% |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 10% | 13% |
| 900万円超 | 33%〜 | 10% | 23%〜 |
課税所得が695万円以下なら申告した方が有利、695万円超では申告不要のままの方が有利という判断が基本です 。
ケース②:株式譲渡損との損益通算
株の売却で損失が出ている年は、確定申告で配当所得と損失を合算できます。たとえば配当所得10万円・売却損10万円の場合、損益通算すると源泉徴収された約2万円(20.315%)が還付されます 。損失の繰越控除(最大3年間)の適用にも確定申告が必要になります 。
関連)https://www.freee.co.jp/kb/kb-kakuteishinkoku/dividend-tax-return/
損益通算が狙えるかどうかは、SBI証券や楽天証券などの証券口座で年間取引報告書を確認してみましょう。
配当控除で税金が戻るからと安易に申告すると、想定外の出費が増えることがあります。厳しいところですね。
落とし穴①:国民健康保険料が激増する
国民健康保険料は「総所得金額等」をもとに計算されます。確定申告で配当所得を申告すると、この総所得金額等に配当所得が加算され、保険料が増加します 。具体的なシミュレーションでは、税金で30万円還付を受けたのに国民健康保険料が60万円増額したケースも報告されています 。差し引きで30万円の実質損失です。痛いですね。
関連)https://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000094970.html
会社員で勤務先の社会保険に加入している場合は影響を受けませんが、フリーランス・自営業者・退職後に国保に加入している方は特に注意が必要です。
落とし穴②:扶養控除・各種給付の境界線を超える
配当所得を申告することで「合計所得金額」が増え、配偶者控除(配偶者の合計所得48万円以下)や扶養控除、各自治体の給付・補助金の対象外になる場合があります 。たとえば年金受給者で配当所得を申告したことにより、合計所得が一定額を超え、医療費の高額療養費の自己負担限度額が上がるケースもあります 。
関連)https://www.youtube.com/watch?v=gi2mjcSTQeA
税金の還付額が小さい場合、これらのデメリットが上回ることは珍しくありません。申告前にトータルでシミュレーションすることが条件です。
所得シミュレーションには、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を活用するか、税理士に相談することで、申告した場合としない場合の手取り差額を事前に把握できます。
参考:配当控除の詳細と計算方法(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1250.htm
2023年(令和5年)以降、住民税の取り扱いが大きく変わりました。これだけは覚えておけばOKです。
つまり令和5年以降のルールは。
結論は「令和5年以降は一体で判断する」です。
以前の節税スキームをそのまま踏襲している方は、税理士や証券会社のFPに改めて相談することを強くおすすめします。
参考:令和5年以降の課税方式統一について(税理士解説)
https://www.pendel.jp/topics/column/2757/
確定申告不要制度の適用可否は、利用している口座の種類によって大きく変わります。口座別に整理するのが基本です。
| 口座の種類 | 確定申告 | 申告不要制度 |
|---|---|---|
| 特定口座(源泉徴収あり) | 原則不要 | 利用可(口座ごとに選択) |
| 特定口座(源泉徴収なし) | 原則必要(給与以外の所得20万円超の場合) | 20万円未満なら選択可 |
| 一般口座 | 原則必要 | 不適用 |
| NISA口座 | 不要(非課税) | 対象外 |
関連)https://ma-la.co.jp/m-and-a/dividend-deduction/
特定口座(源泉徴収なし)で利用している場合、年間の配当金や売却益が20万円未満であれば申告不要制度が適用できます 。ただし住民税は別途市区町村への申告が必要な点には注意が必要です。
関連)https://ma-la.co.jp/m-and-a/dividend-deduction/
また、複数の証券口座を持っている方は注意が必要です。口座をまたいだ損益通算は、確定申告でしか行えません。たとえばA口座の配当10万円とB口座の売却損10万円を相殺したい場合は、申告不要制度を使わず確定申告を選択する必要があります 。
関連)https://www.pendel.jp/topics/column/2757/
自分の口座種別がわからない場合は、証券会社のマイページや年間取引報告書で「特定口座区分」の欄を確認しましょう。これが最初のステップです。
参考:配当所得の課税方式まとめ(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)